「わっ、ごめんなさい!」

 まだ薄暗い時間、小さな声で呟いて白桃大知は俺から離れた。白桃大知の温かい体温を感じていると気持ちよくなってきて、自分もいつの間にか眠っていた。

「いや、大丈夫だから、気にしないで」
「でも、遥斗くんは僕より小さくて細いから、潰れ……」
「いや、小さいっても身長175あるし、それに鍛えてるから潰れないし」

「そ、そうですよね。本当にごめんなさいでした」
「いや、それよりも、昨日の夜は、何も覚えていなくて……」

 でも白桃大知の心の声は『急に抱きしめてしまい、告白までしてしまった。覚えていないふりをしてしまえば……』と。

「……覚えてるじゃん」
「えっ?」

「実は俺、人の心が読めるんだ」

 無言のままこっちを見つめ、目が全開になった白桃大知。
 いつかは打ち明けたいと考えていたけど。でも多分、今打ち明けるべきではなかったかも。でも俺にとってはすごく大事な出来事だったのに、逃げるように嘘をついてきたからつい……。
 
「やっぱりそんな特殊能力があったんだ……」
「……いや、疑わないの?」
「だって、遥斗くんは僕の特別だし。特別な人だから」
『やっぱり、遥斗くんは特別だ』

 心の中でも疑わずに信じる白桃大知。
 実は幼いころにも両親に打ち明けていた。

 だけど「そうなんだ、すごいね」なんていいながら心の中は『本当に人の心なんて読めたら、人生がどんなにラクか。読めるなんて、ありえない』なんて、否定的だった。今も心の中では否定されるだろうなんて思っていたのに。

 今、否定していた当時の両親の心の中に返事をするならば「人の心が読めてもラクじゃない。むしろ知らない方が平和でいられたことも知ってしまって、しんどい」と伝えるだろう。

「本当に信じるのか?」
「はい、信じます。遥斗くんの言葉は全て信じます」

 誰にも言えない秘密をふと打ち明けて、それを肯定してくれた。

 勝手に涙が溢れてくる。

「俺、もう白桃がいないと生きていけないかも。俺も、白桃が好きだ」

 正直な気持ちを伝えると、何故か白桃大知もつられて泣き出した。
 そしてぎゅっと俺を抱きしめてきた。

 そして白桃大知は、優しくキスをしてきた。

***