私の旦那様には3つの顔がありました!?

「はいよー。で、靴を脱いでくださいね?」
「それくらいわかるわよ!」
「ウソだ。俺は間違えたぞ?」
「ふふっ…。…思ったよりも抜けているのね」



 思わず笑ってしまったわ…。
 だって、学校ではあんなに完璧で誰もが一度は好きになる銀葉湊が、こんなミスをするなんて。

 それに…。これはわたししか知り得ないことなのよね…?
 そう思うと少しだけ優越感に浸れた。



「………。はい、ここからは廊下な。玄関から入って右にすぐあるドアが俺の部屋と、奥のドアが灯の部屋。」
「なるほど、わかったわ。」
「で、左側にあるドアが脱衣所と風呂で、その奥のドアがトイレになってます。」
「脱衣所に洗濯機と洗面所があるのね。」



 マンションは、実家とは違ってコンパクトな仕様になっているらしい。
 前みたいに部屋を移動するだけで4、5分歩くことはもうしばらくなさそう。



「そう。で、まっすぐ進んで正面にあるドアがLDKね。」



 そうしてドアを開けてリビングに入ると右手には、ペニンシュラキッチンという広めでゆとりのあるキッチン。
 中央には6人ほどが座れるダイニングテーブルがずっしりと置いてあって、左側にはテーブルと大きなL字のソファ、大型テレビ、そして今はまだ季節外れの薪ストーブが置かれていた。