無自覚なまま、愛を蓄えて。


すると甘い味と苦味のあるコーヒーの匂いが口全体を駆け巡った。



「美味しい!」


「そうでしょ、そうでしょ〜!」



久しぶりに飲んだコーヒーはとても美味しくてほっとする味だった。


いつもは匂いを感じるだけだったけどたまにはこうして味を感じてみるのもいいかもしれない。



「コーヒーはね、心を落ち着かせる効果があるのよ。悩みがあったり、忙しい時はよく飲むのよね」



カチャカチャと食器類を片付けながら話すマスターはなんだかとても嬉しそう。



「マスターもよく家で飲んだりするんですか?」


「そうよ〜。これが私の楽しみだもの」



私がそう質問すると目をキラキラと輝かせながら話す。


カップの中のコーヒーをじっと見ながら、私は梓くんのことを思い出してしまった。



「マスター」


「ん?なぁに?」



無意識に口を開き、マスターを呼ぶ。


なんだか人に話のはドキドキして、次の言葉が出るのに時間がかかってしまった。