恐るべし、梓くんの噂……。
「大丈夫ですよ。梓くんとはもう全くと言っていいほど関わりはないですから。仲良かったのは昔だったし……。それに、向こうから私に何かあるなんて絶対ありません」
梓くんの噂を知っている私の身からしてみればなんてことない。関わりすらないのだから、怯える必要もないのだ。
だけど……今日、ここに来たのだけは予想外だった。
これから嫌なことがなければいいけど……。
「そうなの?あんなに仲良さそうだったのに?」
私の言い切った言葉に首を傾げるマスター。
「あのどこが仲良さそうなんですか〜?もう梓くんのことは忘れましょう?」
一方的に会話を終わりにし、片付けを始める私。正直、梓くんのことを忘れるなんて無理だけど、マスターとあまりこのことを話したくなはなかった。
「えー、でも……」
「いいからいいから!マスターは厨房の片付けお願いしますよ!」