無自覚なまま、愛を蓄えて。


サラサラの黒髪の合間から見える切れ長の目。たった一瞬で目が合っただけなのにまた、心を奪われた。


ドクドクと早鐘を打ったかのように静まることを知らない心臓。


謎の緊張感が私の周りにまとわりついていた。



「優星ちゃん!レジお願いー」


「……い、今行きます!」



どれくらい時間がたっただろうか。おそらく数秒しか時間は経っていないはずなのに長く感じた。


マスターに呼ばれるまでその場に固まっていた私。ハッとして顔を背け、レジに向かおうとする。



「……ホットコーヒー、2つ」


「え?」



彼が小さな声でそう言っていた。注文が入るとは思っていなかったので慌てて注文用紙を取り出し、メモを取ろうとする。



「ほ、ホットコーヒーお二つですね。少々お待ちください」


「…………」



とりあえずメニューを聞き取れていたことにほっとし、踵を返す。今度は腕を掴まれることなく店の奥へ入ることができた。