瑞希お兄ちゃんは笑顔だった。
「凛、俺の部屋で食おうぜ!モニカの絶品生チョコ♪」
「は、はい!」
(好きな人が笑顔なのは嬉しいけど――――――――――)
ここに帰った時の彼は沈んでいた。
しんどそうで、辛そうで、負の感情を抱えているように見えた。
(カラ元気なのかな・・・?)
「ほら、凛!先に部屋に入れ!」
「・・・お邪魔します。」
ドアを開けられ、言われるがまま、瑞希お兄ちゃんの部屋に入る。
見慣れた家具とバリスタの教科書のある場所。
「そのへんに座れよ。」
「・・・はい。」
ベッドの前を指定され、仰る通りにする。
瑞希お兄ちゃんのベッドはフカフカの羽毛を使っている。
自然と背中に、柔らかい感触が伝わる。
でも、外から―――――檜扇一族のいる薄汚い場所から帰ってきた身なので、もたれかからないようにして腰を下ろした。
「凛、ベッドにもたれかかっていいぞ?」
「いや・・・病院から帰って、着替えてませんので。」
「コートは脱いでるから、問題ねぇーよ。いちつまでも緊張しなくていい。」
グイ!
トン!
「わ!?」
そう仰るなり、私をベッドに押し付ける。
「瑞希お兄ちゃん!」
「あははは!わりぃ、わりぃ!驚かせたな?」
笑顔を絶やさない好きな人に心配になる。
「驚くよりも・・・僕は、瑞希お兄ちゃんのこと、気になります?」
「なんだぁ~?愛の告白か?」
「違います。」
(それはまだ先の予定!!)
「僕が言いたいのは、瑞希お兄ちゃんが平気なふりをしてないかってことですよ?」
「あははは!凛は相変わらず、人の心配しかしねぇーのなぁ~?」
そう言いながら、テーブルに飲み物を置くと、わしゃわしゃと私の頭を撫でまわす好きな人。
「・・・ご無理なさってませんか?」
「気持ち切り替えたって言えよ。いつまでも、クズ共のせいで凹んでらんねぇーからな!」
その言葉で瑞希お兄ちゃんを見上げれば、苦笑いしていた。
「やっぱり、無理してた・・・!」
「あーあ!凛にはかなわねぇーなー・・・」
私の頭をなでる動作が静かになっていく。
その動きに身をゆだねながら、私はプレゼントされた生チョコとお手拭き2枚をテーブルに置いた。


