彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)









「た、助けて!!お義母様を助けて下さい!!」
「助けるな、シゲちゃん!!そのまま見殺しにしてくれ!!」
「いくら光憲君の頼みでも、僕の辞書に見殺しの単語はない。つなぐさん、檜扇未子さんの拘束を解いて下さい。」
「我が君・・・。」


「・・・シゲ先生の仰る通りにしなさい。」


「おい、蓮君!?」
「御意。」








私の言葉に動揺する鳥恒先生をよそに、つなぐは指示通り、檜扇未子から手を放す。
途端に、義理の母へと駆け寄る元皇族。





「お義母様!お義母様!お気を確かに!」
「未子さん、ここはあなたの病院でしたね?至急、主治医の元へ湖亀さんをお連れして下さい。」
「む、無理よ!!主治医は裏切り者山口だったのよ!?他に医者は――――――――!!?」





そこまでしゃべって、何かに気づいた顔をする檜扇未子。








「あなた確か山口から、名医だと呼ばれていたわね!?」
「長く医者をしているだけです。」
「それは見ればわかるわよ!!助けなさい!!」
「真田瑞希君と凛道蓮君を殺さないと約束できますか?」
「する!!するわ!!だからお義母様を――――――――!!」
「良信君、秀一君、拘束を解いて下さい。診察室へ湖亀さんを運ぶ手伝いを、ご主人と息子さんにして頂きます。」



「重治っ!!!」








怒声が飛び、シゲ先生の行く手を鳥恒先生が遮る。








「重治っ!!!俺は―――――――――――!!!」
「君の言いたいことはわかるよ、光憲君。だからこそ、僕は言いたい。高野湖亀が報いを受けるタイミングはここじゃない。苦しみぬいて、助からないと絶望して、命の火が消える瞬間こそ、望ましいんじゃないのかい?」
「しかしっ!!!」
「君のお弟子さんも見てる。師範が道を踏み外してはいけないよ。」
「~~~~~~~~~~~くそっ!!!」

ダン!!!








悔しそうに、心底悔しそうに壁を叩くと、シゲ先生達に道を開ける鳥恒先生。