彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)








「ほどなくして、会場から帰る段階になって竜憲兄上は倒れた!!病院に運ばれ、検査された結果、心不全と診断された!!話をすべて聞いたおばあ様と、現場ですべて見ていた母上は、竜憲兄上の解剖を望まれた!!毒殺だとわかりきっていたから!!それなのに、それなのに父上は!!父上が許可しなかった!!!あのクソ親父は許可しなかったんだ!!!」
「そんな・・・解剖さえすれば、正確な死因が、毒殺だったかどうかわかったのに!!」
「・・・だいたい見当はついた。鳥恒さんの親父、湖亀に色仕掛けで、たぶらかされちまってたんじゃねぇか?」
「そうだ!!今となって思えば、たぶらかされてしまっていたとしか考えられない!!いくら美人だったとはいえ、息子の嫁の色仕掛けに負けるとは情けない・・・!!」
「え!?鳥恒先生のお父様、湖亀さんの色気にやられたってことですか!?」
「そう考えればつじつまがあうだろう、凛。肉体関係になってたんだろうぜ。」
「そうだ!!そう考えるのが自然な流れなんだよ、凛道蓮君!!」







私の問いに、2人がかりでYESと言う瑞希お兄ちゃんと鳥恒先生。
さらに鳥恒先生の話は続く。







「竜憲兄上が亡くなり、母上は解剖をしなかった父上を責め、湖亀を人目もはばからず嫌うようになった。父上は母上の機嫌を取ろうとして、竜憲兄上の喪が明けて間もなくの頃にデートに誘って出かけたんだ。」
「えっ!?デートに出かけちゃったんですか!?」
「よく誘いに乗りましたね、おふくろさん。」
「・・・元々、母上の方が父上にべた惚れをしていたんだ。『お土産を買ってくる』と父上は言い、母上は私を抱きしめて頬にキスしてくれた。『すぐに帰ってくるから、良い子で待っててね。』と、竜憲兄上とよく似た笑顔で母上が仰ったことは、今も忘れられない。その時の優しい声がまだ頭に残っている。」







穏やかにしゃべる鳥恒さん。







「だから―――――――両親が心中したと聞かされた時、信じられなかった。」

「「心中!!?」」

「焼身自殺だった・・・。」
「ええ!?焼け死んだのですか!?」







まさかの展開に聞き返せば、涙をぬぐいながら鳥恒さんは言う。