彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)








「あの・・・竜憲さんの心因は何だったんすか?」
「心不全だ!!」
「心不全!?・・・あの、竜憲さん、お年はおいくつで――――――?」
「若かった!!突然死にしては、おかしい今でも思ってる!!証拠はないが、あいつらは、竜憲兄上が亡くなる以前から、おかしな動きをしていた!!」
「あいつらって・・・・・檜扇達比古さんと湖亀さんですか?」
「おかしな動きって、なんすか?」
「『仲良くしたい』と言う名目で、竜憲兄上に飲食物をあの女は届けに来ていたんだ!!おばあ様は、『何が入っているかわからないから口にするな』と竜憲兄上に念を押し、竜憲兄上も食べずにいたのだが―――――――」







そこで鳥恒さんの言葉が止まる。







「・・・・・鳥恒さん?」
「大丈夫っすか?無理して、話すことないですよ?」
「いや、吐き出させてくれ・・・!!竜憲兄上は・・・渕上財閥のパーティーで亡くなられた。」
「え!?渕上!?」

(まさか、渕上ルノアの実家じゃないでしょうね!?)

「鳥恒さん!!渕上というのは――――――――――!!?」
「檜扇家と同じく、由緒正しき家柄の大財閥だ。」
「いえ、聞きたいのはそうじゃなくて!!」
「ああ、そうじゃったな。竜憲兄上の死に方じゃったな・・・。」
「あ、いえ、あの、だから~」







悲しそうな顔で言われ、返事に困る私をよそに、鳥恒さんは言った。







「渕上財閥の当主と竜憲兄上が談笑しているところに、あの女が割り込んできた。それも、自然な立ち振る舞いで話に入ってきたのじゃ。母上達と違って、普段から湖亀には普通に、公平に、竜憲兄上は接していた。そんな龍憲兄上と渕上財閥の当主に、あの女は飲み物を差し出した。」
「飲み物をですか!?」
「当主の前じゃ断れないと思ったわけか・・・!」
「そういうことじゃ、真田瑞希君。竜憲兄上が理由をつけて断れば、湖亀はその場で静かに泣いた。『家でも同じように、私からの飲食物を拒まれますね。毒でも入ってると思われているのですか?』とウソをつきながら静かに泣きやがった。憎らしいのは、その姿が美しすぎて人々の心をつかんでしまった事じゃ!!」







恐ろしい女だと思う。
鳥恒さんから語られる檜扇湖亀は、恐ろしいとしか言えない女。
どうして私は、そんな魔物を、一瞬でも良い人だと信じてしまったのだろうか。