「・・・ああ。留学させたことで一安心している間に、計算外のことが起きた。心労が重なったことで、おばあ様が入院と療養をすることになり、父上を次の当主に任命した。父上は当主になったとたんに、湖亀を檜扇家の嫁に迎えると言い出したのだ。」
「え!?なんで!?」
「・・・わからん!わからんが――――――高野湖亀とその弟と一族が、何かしたのではないかと思っとる。」
「・・・ありえますね。」
話を聞く限り、かなりずるがしこい女だ。
(なにかしらのわなを仕掛けて、成功させていたと考えて正しいわ・・・!)
「おばあ様は激怒して反対したが、当主ではなくなったおばあ様に、父上を止める力はなかった。長男である竜憲兄上の反対の声にも耳を貸さなかった。母上は・・・お嬢様育ちで父上にべた惚れしていたこともあって―――――――――1年の留学を終えた達比古が日本に帰ってきた時、『高野湖亀』は『檜扇湖亀』になってしまった・・・!!」
その言葉で、部屋の空気が一気に張り詰める。
「父上は、『同和問題で、世間から差別していると思われるのはよくないので、湖亀を檜扇家の嫁に迎える。』と宣言した。2人のために別館が立てられ、いかがわしい乱交騒ぎが繰り広げられた。おぞましいジキタリス屋敷だったわい!」
「ジキタリス屋敷??」
「ああ、達比古があの女に贈った花の中で、あの女が一番気に入ったのがジキタリスという花なんじゃ。あの女、屋敷の庭一面にジキタリスの花を、種から育てて、ジキタリス一色にしたんじゃよ。だからわしは、今でもジキタリスの花が大嫌いなんだ!!」
「あ、そういうことでしたか。」
「ジキタリスのことはわかったが、最初の夫の時みたいに、金は浪費したんすか?」
瑞希お兄ちゃんの問いに、鳥恒先生は首を横に動かす。


