彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)








「いいや、医者が太鼓判を押すほどの健康体で、矍鑠(かくしゃく)としてらした。趣味が体を鍛える人だったし、健康にも人一倍気をつけていらっしゃった。それが・・・。」
「それでも、年には勝てなかったってことじゃないすか、鳥恒さん?」
「そういう考え方もあるのは理解しとるよ、真田瑞希君。わしはね・・・おじい様は毒を盛られて殺されたんじゃないかと思ってる。」

「「殺された!?」」

(誰に!?)


「だ、だれがおじいさんを殺したと思ってるのですか!?
「檜扇達比古と高野湖亀だ。」







眉間にしわを寄せながら、言葉をつむぐ鳥恒さん。







「おじい様が死去し、喪も明けないうちから、達比古は湖亀を檜扇家に連れて来て、『やっぱり、子供を堕胎させた責任を取って結婚したい。』とほざきおったのだ。」
「え!?バカですか!!?」







〔★大馬鹿とも言える★〕





私のツッコミに、瑞希お兄ちゃんがぼそりとつぶやく。







「未練があったってことスか・・・?」
「未練というよりも真田瑞希君・・・わしは、別れたフリをしていただけじゃないかと思っておる。」
「別れた振りっすか?」
「タイミングが良すぎたんだよ。達比古の申し出に、最初は両親も龍憲兄上も反対した。湖亀は諦めずに、結婚を許して下さいと通い続けた。達比古も今度こそ別れないと言って、言うことを聞かない。これに危機感を覚えたおばあ様が、達比古を海外留学させ、物理的に引き離す作戦に出た。檜扇家の当主をおばあ様が引き継いでいた。当主の言うことは絶対命令だ。達比古は両親に、父上と母上に、湖亀と離れたくないと泣きついたが、世間体を気にする両親は達比古を渡米させた。湖亀も一緒に連れて行こうとしたのを、おばあ様が止めて1人で海外留学をさせたのだ。」
「そうだったのですか・・・。」
「けど、上手くいかなかったんだろう?」
「え?」







強い語尾で瑞希お兄ちゃんが言う。
思わず瑞希お兄ちゃんを見れば、初代龍星軍総長の顔をしていた。
それで反射的に、鳥恒先生を見れば、唇をかみしめてから言った。