彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)








「それから数日して、竜憲兄上と一緒に達比古が檜扇家に帰ってきた。なぜ達比古と一緒なのかと怒るおじい様に竜憲兄上は、『自分の職場に、湖亀に騙されたと言って、子供を堕胎したことも、ホルマリン漬けにしたことも知らなかったらしく、怖くなって逃げてきたそうです。』と説明をした。許しを請う孫の姿を見て、おばあ様が勘当をとこうと言った。おばあ様にべた惚れのおじい様は、渋々・・・本当に嫌々な態度を隠すことなく、しかたなく―――――――――二度と高野湖亀とその一族に関わらないことと女遊びをやめて真面目に大学で勉強することを条件に―――――達比古を許した。だがわしは――――――子供心に、許さないでほしかった。達比古を、許さなければよかったんだ・・・!!」







辛そうに、悔しそうに言う姿を見て思う。
まだ、この話は続くのだろう、と。







「達比古は人が変わったように真面目になった。悪い仲間とも手を切り、真面目に大学へ通った。気持ち悪いぐらい、弟であるわしにも優しくなった。龍憲兄上はそんな達比古に変わらず接したが、わしは・・・・・信じなかった。真人間になったと思えず、大嫌いな気持ちは変わらなかった。」
「あ・・・仕方ないですよ。急に気持ちを切り替えるのは、難しいですよね。」
「わかってくれるんだね、凛道蓮君。気持ちの切り替えもあったが―――――薄気味悪かったのだよ。」
「薄気味悪い?」
「達比古のふるまいは、竜憲兄上のふるまいを真似していた。うわべだけの優しい接し方をしているだけで、優しい人間に、善人になったとは思えなかった。達比古のしていることは、竜憲兄上の真似事だったのだよ。」
「え・・・?えーと・・・もしかしたら、身近にいる良いお手本として、お兄様の真似をしただけかもしれませんよ?」
「青いな、凛道蓮君。君は純粋すぎる。」
「え?」
「心を入れ替えた達比古の演技は長くは続かなかった。おじい様が――――――心室細動を起こしてお亡くなりになったとたん、元に戻ったのだからな!!」
「ええ!?鳥恒先生のおじいさん、心臓が弱かったのですか!?」







思わず確認すれば、首を横にふりながらお坊さんは言った。