「当時、学生だった達比古が、今すぐ結婚したい相手だと言って家に連れて来たのが高野湖亀だ。これに当主であるおじい様は、達比古と湖亀の結婚を許さなかった。おじい様は身分で人を差別する人ではなかったし、実際、新平民になった部落者を屋敷で雇っていた。屋敷で働く新平民の子供の学費を出してやることもしていた。そのおじい様が即答でダメだと反対した。」
「即答で、ですか?」
「即答だったよ。達比古が湖亀を家に連れて来た時、わしは顔を見ただけだった。おじい様とおばあ様と父上と母上と竜憲お兄様と、達比古と湖亀だけで食事会をした。どんな話をしたかわからないが、結論からしておじい様は、『妾(めかけ)であっても、高野湖亀を家に入れるな!!子を作ることも許さないし、子が出来ても檜扇家の子として認知しない!!』と、激昂されたのだ。」
「なにしでかしたんですか、湖亀さん!?」
「凛道蓮君に言うのは心苦しいが・・・湖亀は、美しい顔と豊満な身体でのし上がった女だ。」
「?つまり?」
「目立っていたのだよ、部落の中でも。なによりも、部落出身の家人が、おじい様達に進言していたんだ。『高野湖亀は、危険な女です!お金しか興味がないので、たちまちにお家をつぶされます!』とな。」
「食事会に立ちあわなかったのに、ずいぶんくわしいんすね、鳥恒さん?」
「詳しいさ。」
瑞希お兄ちゃんの疑問に鳥恒さんは、さらりと答える。
「部落者の同僚の話は、召使達の間であっという間に広がり、湖亀が家に来る時は、乳母達がわしの側から離れないで、隠したほどだったからね。もっとも、家に来たところで、湖亀は門前払いされていたよ。何度も、何度も、門前払いされて、『来るな!!』と言われても、あの女は通い続けた。まるでスッポンだ。」
「執念深いですね。」
「ああ、執着がすごかった。おじい様に、おばあ様に、時には両親に追い返され、泣いている湖亀の肩を達比古が抱いて屋敷から出るのが習慣になってしまうほど、しつこかった。その様子を見ているうちに・・・・・・子供心にだんだんと、『高野湖亀』が嫌いになっていった。」
「それだけしつこいと、僕でも嫌いになりますね・・・。」
「ウェイウェイウェイ!奇遇だね、リンリン♪ちーちゃんも同じ気持ちー♪」
「俺もっすよ!凛さん!!」
「我が君に賛同いたします♪」
私のつぶやきに、友達はみんな同意してくれた。
そんな中で、鳥恒先生の話は続く。


