彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)






「花瓶を・・・持って行かれませんでしたね・・・」
「他の部屋に、置いてあるのを使うから大丈夫よ、蓮ちゃん。」
「あ、そうでしたか。」
「そうよ♪ところで蓮ちゃん、今日はどうやってここまで来たの?」
「友達のバイクに乗せてもらってきました。」
「まあ、バイクで来たの?寒かったでしょう?」
「着こんでいるので平気ですよ。」
「舟槙(しゅうま)ちゃんから聞いたけど、舟槙(しゅうま)ちゃんからの送迎を辞退したんですって?」
「若いうちから楽を覚えて、甘えるのはよくないですから。」
「しっかりしているのね、蓮ちゃん・・・!でも、私に会いに来る時は、遠慮しないで、私の家の者を、身内を自由に、好きに使っても良いのよ?」
「お気持ちだけで十分です。」
「あなた、優しい子なのね・・・きっとあの子も・・・優しい子なんでしょうね・・・」
「どの子ですか?」
「・・・・・・真田瑞希ちゃんよ。」
「超優しいです!!」





その言葉に、反射的に即答する私。





「あ。」

(しまった!!瑞希お兄ちゃんの情報出しちゃった!!)





後悔する私を、湖亀さんは目を輝かせながら見ていた。





「蓮ちゃん。」
「な・・・なんでしょう・・・?」
「瑞希ちゃんについて・・・・・教えてくれないかしら・・・・・?」
「え!?」

瑞希お兄ちゃんのことを教えてって―――――――――!!?



(こいつっ!!瑞希お兄ちゃんの情報よこせと言ってキタ―――――――――――――――!!)

ん!?ていうか、待てよ!

「あの、僕から聞かなくても、探偵さんから調べた内容を聞いたりしてるんじゃないのですか?」
「社会的評価が聞きたいわけじゃないの。」
「え?」
「興信所からは、瑞希ちゃんが元・日本一の暴走族の総長で、今はバリスタの見習いをしてると聞いたわ。でも、私が聞きたいのは、知りたいのは、瑞希ちゃんという人間の内面なの。」
「内面、ですか?」





聞き返せば、笑顔でうなずく老婦人。





「どんな時に笑って、どんな時に怒って、どんな時に楽しくしてるのか・・・瑞希ちゃんの内面を知りたいの。調査ではわからない、普段の瑞希ちゃんを、素の瑞希ちゃんを知りたいの・・・!」
「湖亀さん・・・。」





湖亀さんのセリフを聞いて、私は強く思う。








(楽して情報とろうとすんなよコラ―――――――――――――!!!?)








〔★凛の怒りスイッチがオンになった★〕