彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)




夜景を見せてくれた後のヘルメットマンさんは、街中や高速を走ってくれた。
私が集会で走り慣れている場所ばかりで、乗っていてすごく安心できた。
走りを堪能しきったところで、私はフェリチータへと帰還した。
優良運転者だとわかる軽やかな動きで、単車をお店の前に止めてくれるヘルメットマンさん。
周囲を見渡すが、先ほどの怪しい父親はいなくなっていた。





(これで安心して家に入れる♪)

「ヘルメットマンさん、今夜はありがとうございました!」
「・・・。」





後部座席に座った状態でお礼を言えば、バイクにまたがった姿勢で振り返るヘルメットマンさん。
そして、私の半ヘルメットを丁寧に外してくれた。





「あ!?じ、自分で、出来ますので~!」
「・・・。」





と言ってる間に、ヘルメットマンさんが外してくれた。

本当にいい人だと思う。





「ヘルメットマンさん、ヘルメットを外してくれて、ありがとうございました!」
「・・・。」





後部座席から地面に降りて、ヘルメットマンさんを見ながら最敬礼をする。
顔を上げた時、ヘルメットマンさんはこちらに顔を向けていた。
街灯が近くにあるとはいえ、やっぱりその素顔はわからない。





「あの!良かったら、これお礼にどうぞ!」





おやつで持たされたチロルチョコのミルクを1つ差し出す。





「・・・。」
「お、お嫌いじゃなかったら、食べて下さい!」
「・・・。」





無視されるかもと思って、恐々しながら伝える。
これにヘルメットマンさんは、私の差し出したチョコを無言でポケットに入れた。





「あ、ありがとうございます!それ、ロングセラー商品だから、美味しいですよ!?」
「・・・。」





何も言ってもらえないけど、受け取ってもらえて嬉しかった。
嬉しさで気持ちが高ぶったこともあり、私は聞く機会がなかったことを相手に聞いていた。