夜景を見せてくれた後のヘルメットマンさんは、街中や高速を走ってくれた。
私が集会で走り慣れている場所ばかりで、乗っていてすごく安心できた。
走りを堪能しきったところで、私はフェリチータへと帰還した。
優良運転者だとわかる軽やかな動きで、単車をお店の前に止めてくれるヘルメットマンさん。
周囲を見渡すが、先ほどの怪しい父親はいなくなっていた。
(これで安心して家に入れる♪)
「ヘルメットマンさん、今夜はありがとうございました!」
「・・・。」
後部座席に座った状態でお礼を言えば、バイクにまたがった姿勢で振り返るヘルメットマンさん。
そして、私の半ヘルメットを丁寧に外してくれた。
「あ!?じ、自分で、出来ますので~!」
「・・・。」
と言ってる間に、ヘルメットマンさんが外してくれた。
本当にいい人だと思う。
「ヘルメットマンさん、ヘルメットを外してくれて、ありがとうございました!」
「・・・。」
後部座席から地面に降りて、ヘルメットマンさんを見ながら最敬礼をする。
顔を上げた時、ヘルメットマンさんはこちらに顔を向けていた。
街灯が近くにあるとはいえ、やっぱりその素顔はわからない。
「あの!良かったら、これお礼にどうぞ!」
おやつで持たされたチロルチョコのミルクを1つ差し出す。
「・・・。」
「お、お嫌いじゃなかったら、食べて下さい!」
「・・・。」
無視されるかもと思って、恐々しながら伝える。
これにヘルメットマンさんは、私の差し出したチョコを無言でポケットに入れた。
「あ、ありがとうございます!それ、ロングセラー商品だから、美味しいですよ!?」
「・・・。」
何も言ってもらえないけど、受け取ってもらえて嬉しかった。
嬉しさで気持ちが高ぶったこともあり、私は聞く機会がなかったことを相手に聞いていた。


