彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)




「蓮ちゃん、帰らないで!!」



後ろからそんな声がしたので――――――――――



「また来ます。」



振り返って、声を発した人に笑顔を向ける。
相手は泣きそうな顔をしていたけど、心を鬼にして前を向く。
その一瞬の間に、視界に柊護(しゅうご)さんの姿が映る。
彼は腰に手をあてて、私を見ていたが、視線が交わるとそっぽを向いてしまった。







(避けられてるな―――――――・・・・・・)







そんな思いで病室から出ると、相変わらず団子になって固まっている親戚集団がいた。





「もうお帰りか!?」





そのうちの一人がそう言ったが、無言で会釈をして通り過ぎる。
それで、ブツブツと何か言ってるのが聞こえたけど無視した。







「蓮クン、待ってくれ!」







エレベーターの前まで、舟槙(しゅうま)さんが追ってきた。







「大伯母様の元へ戻ってくれ!頼むから、帰るなんて言わないでくれ!」
「・・・すみません。今日は帰らせて下さい。」
「俺が――――――――いろいろしゃべったからかい?」
「違います。舟槙(しゅうま)さんは悪くありません。悪いのは―――――――――」

チーン!







そこでエレベーターが到着する。
エレベーターに乗り込んで、開くボタンを押しながら私は言った。







「湖亀さんの前で、二三人さんに伝えて下さい。『頭を冷やせ』、と。」
「・・・二三人伯父様が原因か・・・。」







その問いに無言で見返せば、舟槙(しゅうま)さんが申し訳なさそうにつぶやく。







「そうか、そうだな・・・混乱しても、無理もない・・・。一度にたくさん、話し過ぎた。ごめんね、蓮クン。」
「謝らないで下さい。僕も頭を冷やしたいので。」
「君は優しいね。」
「優しく見せてるだけですよ。それじゃあ、失礼します。」







エレベーターの閉じるボタンを押す。





「蓮クン!待って!送っ――――――――!」





舟槙(しゅうま)さんが何か言いかけたけど、閉じるボタンを強く押し続けた。
ドアが閉まり、エレベーターの中で1人になる。







「・・・・・・あーあ・・・・・・髪を洗って乾かしてもらっておいて帰るのは――――――失礼だったかな?」







エレベーターの中にある鏡を見ながらつぶやく。