彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)




「あ!?ちょっと、なにするんですか!?」
「来なさい!悪いようにはしないから!」
「すでに悪くされてますよ!離して!!」



力を込めて掴まれた腕を振る。



ブン!

「うわ!?」

ドサ!



(あれ!?)



あっさりと、私から手を離す相手に拍子抜けする。



(そんなに強くはない?)



家に逃げ込んじゃえば、こっちのもんじゃない?



そう思ったが、甘かった。





「旦那様!」
「大丈夫ですか、旦那様!?」
「お怪我はありませんか!?」





どこからともなく、スーツ姿の男達がぞろぞろと出てくる。





(いつの間に!?)





反射的に戦闘態勢を取れば、助け起こされながら不審者の男は叫んだ。





「凛道蓮君を確保しなさい!!」
「え?」
「「「はい!」」」





その命令で、スーツの男達が私に近寄ってきたのだが―――――――





ギュワワワ――――――――――ン!!





間近でエンジンの音がした。





(この音は!?)





ギュワーン!!ギュワーン!!ギュワ―――――――――ン!!





音がした方を見れば、バス停の方角から1台のバイクがこっちに向かって来る。





「な、なんだ!?何者だ!?」
「あれは――――!?」


(ヘルメットマンさんっ!!?)


ギュワ、ギュワ、ギュワワワ――――――――――ン!!





歩道にいる私達へと、ヘルメットマンさんは突っ込んできた





ガシ!!

「え?」

ヒョイ!!

「え!?」





不審者の父親とスーツの男達の間をすり抜けると、私を抱きかかえて走り抜けた。





「なっ!?まっ、待て―――――――――!!」


ギュワワワ―ン!!―――――――――ギュワーン!!





徒歩で追いかけてこようとする男達をあざ笑うように、直管コールを鳴らすヘルメットマンさん。
あっという間に、フェリチータは遠ざかり、道路中央をさっそうと走る。





「あ、あの!」
「・・・。」





いきなり現れたことに驚いたが、言うべきことは言わなければと思って声をかけた。





「助けて頂き、ありがとうございました!!」
「・・・。」

(・・・・・まただわ。)





お礼を言うが、返事は返ってこない。
それどころか、一言もしゃべらない。
いつものことだけど、本当にヘルメットマンさんはシャイだと思う。
そう思う一方で、私は考えた。