約束通り、舟槙(しゅうま)さんと東山高校前で待ち合わせ、舟槙(しゅうま)さんの介護車で『千葉総合医療病院』まで行った。
エレベーターを乗り換えて、VIP専用の病室へと向かう。
病室の前には、前回同様に、陰鬱なムードの親類達がいた。



「みなさん、こんにちは!」



挨拶をするが、彼らからの返事などない。
私から視線を逸らすか、聞こえないふりをして会話を続けるか、ジッと私をにらみつけるかで別れるだけ。
どうでもいい人達なので、それらの塩対応は想定内。
舟槙(しゅうま)さんは困った笑みを浮かべつつも、私の手を握ると、私をかばう姿勢で不愉快な連中の横を通り過ぎる。
そして、病室のドアを、コンコンとノックしてから、舟槙(しゅうま)さんは中に入った。



「こんにちは、大伯母様!凛道蓮クンと一緒に来ましたよ!」



私の手をつないだまま、勢いよく舟槙(しゅうま)さんがドアを開ける。





(あ。)





真っ先に目に入ったのは、瑞希お兄ちゃんと似た姿をした人。
ヘルメットマンさん改め、檜扇柊護(ひおうぎ しゅうご)さんもいた。
今日は、檜扇湖亀さんの横にあるソファーに腰かけていた。
私をジロっと見たがすぐに視線を湖亀さんに戻す。



「やあ、やあ、待っていたぞ蓮!」



柊護(しゅうご)さんとは真逆に、私へ歓迎の声を上げたのは、湖亀さんの手を握っている夫の檜扇達比古教授。





「1日ぶりだが、昨日のバーベキューは楽しかったな~!?」
「ええ、昨日は、お粗末さまでした。」





会釈をしながらエロ教授と話していたらしい檜扇湖亀さんが、私達の方へ視線を向けながら声を上げた。







「まあ!凛道蓮くん、よく来―――――――――――」
「よく来たな、蓮―――――――――――――――――!!」







檜扇湖亀さんの言葉に、口ひげ野郎の声が重なった。







「会いたかったぞ、蓮!!元気にしていたか!?」
「檜扇さん、お加減いかがですか?」
「俺はいつでも元気だぞ!?」
「あなたには聞いてません。檜扇さんに聞いてるのです。」
「俺も檜扇だ!!」
「檜扇湖亀さん、お加減はいかがですか?」
「言い直すのか、蓮!?」
「ええ、今日は体調がいいですよ。」







クソ野郎を無視して言えば、同じようにクソな息子を無視しながら老婦人は返事をしてくれた。