彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)




(あーあ・・・・・瑞希お兄ちゃんの送迎なしかぁ・・・)



瑞希お兄ちゃんが握ってくれた手を見つめながら、恋しさを紛らわす。
幸い、終了を告げられたのは、フェリチータの近く。
歩いて帰るのには問題のない距離。
街灯のある道を、1人、トコトコと帰る。
金曜日の夜ということもあって、土日は瑞希お兄ちゃんの家に泊まる気で来ていた。



(誰もいないから、コソコソしないで、ゆっくりお風呂に入れるな~)

でも油断は禁物!

瑞希お兄ちゃん達が帰ってくるまで起きてるつもりだから、しなくていいと言われたお風呂掃除、やってしまおう!



そう決意した頃には、私はフェリチータの前に到着していた。
そのまま、出入りしている裏口へ行こうとした時だった。





「こんばんは。すみませんが、ちょっといいですか?」
「え?よくないです。」





誰かに声をかけられたが、NOと返事をして素通りする。



「えっ!?ちょ、ま、待ってよ!」



そう言って、私の行く手を人影が遮る。





「凛道蓮君だよね!?」





私の名前を確認しながら聞いてきたのは、瑞希お兄ちゃんより少し年上ぐらいの男性。





(見たことないな、こいつ?)

「どちら様ですか?」





そう思ったので聞いたのだが、相手はとんでもない返事を返してきた。





「俺は、真田瑞希君の関係者なんだよ。」


(はあ!?)

「・・・瑞希お兄ちゃんの?」

「そうなんだ!」





それで相手を注視する。
もっさりした黒髪の頭に、ひょろっとしたやせ型の男性だった。
大きな額と耳をしていて、長い顔だが、美白と言えるぐらい白い肌をしていて、身長は平均に届くか届かないか。
ずっとニコニコしてるので、悪い人ではなさそうだと思うが―――――――――





(こんな時刻に、人気がない時に、話しかけてくる時点で、『怪しい人』ではあるな。)





そう思ったので、確認の意味を込めて聞いた。