(あーあ・・・・・瑞希お兄ちゃんの送迎なしかぁ・・・)
瑞希お兄ちゃんが握ってくれた手を見つめながら、恋しさを紛らわす。
幸い、終了を告げられたのは、フェリチータの近く。
歩いて帰るのには問題のない距離。
街灯のある道を、1人、トコトコと帰る。
金曜日の夜ということもあって、土日は瑞希お兄ちゃんの家に泊まる気で来ていた。
(誰もいないから、コソコソしないで、ゆっくりお風呂に入れるな~)
でも油断は禁物!
瑞希お兄ちゃん達が帰ってくるまで起きてるつもりだから、しなくていいと言われたお風呂掃除、やってしまおう!
そう決意した頃には、私はフェリチータの前に到着していた。
そのまま、出入りしている裏口へ行こうとした時だった。
「こんばんは。すみませんが、ちょっといいですか?」
「え?よくないです。」
誰かに声をかけられたが、NOと返事をして素通りする。
「えっ!?ちょ、ま、待ってよ!」
そう言って、私の行く手を人影が遮る。
「凛道蓮君だよね!?」
私の名前を確認しながら聞いてきたのは、瑞希お兄ちゃんより少し年上ぐらいの男性。
(見たことないな、こいつ?)
「どちら様ですか?」
そう思ったので聞いたのだが、相手はとんでもない返事を返してきた。
「俺は、真田瑞希君の関係者なんだよ。」
(はあ!?)
「・・・瑞希お兄ちゃんの?」
「そうなんだ!」
それで相手を注視する。
もっさりした黒髪の頭に、ひょろっとしたやせ型の男性だった。
大きな額と耳をしていて、長い顔だが、美白と言えるぐらい白い肌をしていて、身長は平均に届くか届かないか。
ずっとニコニコしてるので、悪い人ではなさそうだと思うが―――――――――
(こんな時刻に、人気がない時に、話しかけてくる時点で、『怪しい人』ではあるな。)
そう思ったので、確認の意味を込めて聞いた。


