どれぐらい泣いたか、わからない。
どれぐらい泣きながら走ったか、わからない。





「ゼーハー、ひっく!ひっく!ゼーハー・・・ひっく、えっぐ!」





呼吸が苦しくなったので、走るのを歩くのに変える。
寒い季節だから、温かくしているはずなのに、寒くてしかたない。








―俺がいいって言うまで、凛はここに来るな!―

―オメーは、俺の視界に入るな!!俺の目の前にくんなっつってんだよ、凛!!!!―

―出て行け凛!!!今すぐだっ!!!!―

―俺の前から消えろっ!!!!―

―出て行け凛道蓮っ!!!!―








どんな時でも瑞希お兄ちゃんは、私の味方だった。

乱暴に扱われたことなんて、1度もない。

それがみんなの前で、怒られた。

怒られたというよりも、完全に激昂された。

敵に対して使うような言葉で、きつく拒絶された。








それを思い出しただけで、冷たい水が両目から出てきて止まらない。








キュォオオオオン!!

「凛っ!!」








そんな状況の中、爆音が響く中で名前を呼ばれる。





「ヤ、ヤ、マトォ・・・・・?」





私が走っている歩道に、縁石が途切れた場所から、強引に単車で入り込むヤマト。
目の前を、行く手をさえぎるように止まると、素早く単車を止めながらかけよってきた。







「凛!!!薄着で飛び出したらあかんやろう!?」







そう言いながら、ヤマトの腕に引っ掛けてあったコート・・・私が着ていたコートを、私の身体にかけてくれる関西男子。







「ヤマトォ・・・・・!」
「泣いたらええ!!泣いたらええから!!」







そう言ってギュッと抱きしめてくれた。
暖かくて・・・・・瑞希お兄ちゃんとは違った意味で心地いい腕の中。








(―――――――――――瑞希お兄ちゃん!!)








ヤマトの腕に抱かれたことで、瑞希お兄ちゃんの腕の中を思い出してしまった私。
それで涙の量が増えてしまった。







「うぅ~!うっ、うっ、うっ!ひっく、えぐ、ひっく!」
「それでええ!!泣いてええねん!!」







情けない姿を見せる私を、ヤマトは否定しなかった。
泣いていいと言ってくれたことで、救われた気がした。