ある日の教室での出来事。
「なぁはく、アールアール入らねぇ?」
なんと湊にアールアールに誘われた。
……急すぎるでしょ。
「えぇっ!?いや、遠慮しとく」
全力で断った。
お兄達がいるならまだしも。
もしお兄達がバルーンチャートだったら裏切ることになっちゃう……って思っちゃったんだよね。
素直にそう伝えると。
「いやでも、1回だけ!体験だけ!お願い!」
「いや、でも、だから……」
「お願い!悪いようにはしないし!俺がついてくからさ!」
手を合わせてお願いされ、1回だけ行ってみることにした。
……断れなかった、の方が正しい。
さすが、ゴリ押しが強い湊だ……はぁ……。
ため息をついて窓の外を見る。
水でといた青色の絵の具を塗りたくった感じの空に、わたあめみたいな雲がふわふわ浮いている。
まぁ、これも経験か。
ほんの少しだけ、体験が楽しみになった。



次の日の昼休み。
仕事があるので早退しますと2人で担任に伝え、早退届を書いてもらう。
「来栖もアールアールなのか?」
不思議そうに聞いてくる先生。
先生もさすがに湊がアールアールに所属していることは知っているらしい。
「いえ、体験です」
ふるふると首を横に振る。
「あぁ……まぁ、頑張れよ。ほら、早退届」
「あざす」
「ありがとうございます」
紙を受け取るが否や、湊はカバンを背負って職員室を飛び出す。
「何してんだはく!早く行くぞ!」
「えっ!?あ、はいっ!」
そっか……遅れたらまずいのか……!
うん、早く言って欲しかったな……!
苦笑いをしながらカバンを背負い、湊のあとを追って走り出した。