千秋と"初めて"出会ったのは、小学校6年生のときだった。



『野宮莉恋です!好きなものは〜……いちごですっ!りこちゃんって呼んでね!みんなよろしく〜!!』
のみやりこ。
それが出会った当初の名前。
今では本当に信じられないが、スカートを履いて、長い髪をツインテールに結んでいた。
まつげは長く、傍に寄るとほんのりフローラルの香りがした。
『ねぇ莉恋ちゃんって何が好きなの?』
『前はどこに住んでたー?』
『身長、何センチー?』
『なぁ、バスケ好き?』
季節外れの転校生ということもあってか、莉恋は学年中の注目を集めていた。
スタイル良し、性格良し、スポーツ良し、勉強良し。
オールマイティな彼女に、皆が魅力され、圧倒された。
彼女に恋をした生徒は、きっと1人や2人では済まなかったはずだ。
『あの……えっと、西町、くん?私、教科書持ってないから見せてくれないかな……?』
初会話は確かそれ。
『いいよ』
そのきっかけのおかげか成果か俺は莉恋とよく話すようになった。
『ねぇ悠里聞いてよ〜!昨日さぁ、親にテストで100点とったーって言ったらさ、良かったね、しか言ってくれなかったんだけどー!』
という軽いものから、
『やばい、3組の吉野くん?て人から告られたんだけど!?』
というかなり重い相談までする仲に。
俺はそのとき内心焦っていたんだ。
俺に恋しない女なんていなかったから。
"男友達"としか思われていない。

まずいと思ったそんなある日のこと。
『ねぇナナってさぁ、悠里と仲良くない?』
『わかるー!なんかいい子ぶってるよね〜!』
同じクラスの女子たちが、教室の後ろの方ではしゃぎながら悪口に花を咲かせていた。
ナナは、俺の幼なじみで、俺と同じスパイだ。
仕事の話とかよくしてるから、そこを勘違いされたらしい。
『オールマイティすぎてまじ無理〜』
『それな? 今日からアイツ無視しよっかな』
『えーめっちゃいいじゃん!』
あぁ……うぜぇ。
ひとりじゃ何も出来ないくせに、仲間が増えると調子にのるタイプ。
『ねぇ、莉恋ちゃんもそう思うよね〜?』
ガツンと一言言ってやろうと立ち上がったとき。
『は?うるさいんだけど!?』
莉恋が立ち上がって女子たちを睨みつけた。
『菜々ちゃんが何したって言うんだよ!? 言ってみろよ!!』
ものすごい剣幕で怒鳴りつける莉恋を見て、空いた口が塞がらなくなった。
女子とか、周りに合わせて発言する生き物じゃねぇの?
『悠里もさ、幼なじみなんだったら止めたらどう?』
まさか怒りの矛先が俺に向くとは思わなくて、思わず口が緩みそうになる。
コイツ……さすが。
俺がどんなに完璧男子でも容赦しない。
大抵の女は俺に媚びを売るばかりで俺の意見と反対のことなんか一切言わないはず。
なのに。
自分が損になっても、構わない発言。
普通の女子とは違う。
やっぱりコイツすげぇ。
そう思った瞬間だった。