「うへ〜、やっぱり強くてもこーゆーの効くもんなんだね〜」
維月がそう言って笑う。
俺は苦笑いを返しながら白露くんに目をやった。
さっきまで会話していたとは思えないほどぐっすり眠っている。
すぅーすぅーと規則正しい寝息が聞こえ始め、かなり効いていることがわかる。
そっと手を伸ばし、白露くんの頭を撫でた。
サラサラの青髪。……やっぱり、お兄ちゃん似なんだな。
いつもはセンター分けをしている白露くんは、前髪をつくるととても大人っぽく見える。
……今度言ってあげよう。
ぺろりと唇を舐めて、ソファーから立ち上がる維月。
「よ〜し、初めよっか〜!」
明るい声でそう言った維月は、黒いコードを取り出す。
それは辿っていくとヘルメットのようなものに繋がっていて、白露くんに被せる。
ごめんね……と心の中で謝り、白露くんの寝ている体制を変えた。
これは、頭の中の記憶を読みとることのできる機械。
白露くんが何かを隠しているかもしれないから、そういう人だとは思っていないけど念の為に使うことにした。
普段は滅多に使わないけど……依音のためには手段を選んではいられない。
それは維月も一緒。
まだぐっすりか……上出来だな。
もう1回頭を撫でて、立ち上がる。
「陸玖ー?準備できた?」
「うん!ばっちりだよ」
維月は手際よくコードを差し込み、パスワードを打っていく。
カタカタカタッとキーボードの音が響き、ピピッとロックの解除された音。
「いくよ……!」
カチリとボタンを押す。
その瞬間。
バチバチバチッと電気が走る。
すると、急に白露くんがぱちっと目を覚まし、バッと立ち上がった。
っ、え!?
「なっ……!」
自分でヘルメットを脱ぐと、頭を抑えてこっちを睨む白露くん。
「っつ……何をする気、ですか……!」
少しだけ息が荒らそう。
維月はというと、自分の作った睡眠薬が効かなかったことに絶句している。
「そんなに俺が信頼出来ないのなら……、俺が出て行きます……っ」
苦しそうな表情を残し、白露くんは静かに部屋を出て行った。