新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

「タクシーで、 帰ろう。 お前の家に、 先寄るから」
「あっ……でも、 まだ電車ありますし、 大丈夫ですから。 高橋さん。 どうぞ、 タクシーで帰って下さい」
「いいから。 乗って」
「で、 でも遠回りになっちゃうし……キャッ!」
結局、 タクシーに無理矢理乗せられ、 一緒に帰る事になってしまった。 何か、 申し訳ないな。
「その……稲葉さんって方。 早く、 日本に帰れるといいですね」
「ああ。 そうだな」
「私が稲葉さんの上司だったら、 今すぐにでも日本に帰してあげたいです」
「フッ……」
そんな私の言葉に高橋さんは笑っていたが、 不意に運転手さんに声を掛けた。
「すみません。 その先を曲がってもらえますか?」
「はい」
エッ……。
私の家はまだ先なのに、 どうしたんだろう。
「話したい事がある。 今晩、 うちに泊まれ」
「高橋さん……」
タクシーで、 そのまま高橋さんのマンションに着いた。
高橋さんが部屋の鍵をあけて、 私を先に中に入れてくれる。
「ンンッ……」
ちょ、 ちょっと、 何?
玄関のドアを閉めるなり、 高橋さんが私を抱きしめキスをした。
まだ、 靴も履いたままなのに……。 高橋さん。 どうしたの?
「ハアハアハア……キャッ!」
やっと解放された時には腰砕けになっていて、 やっとの思いで靴を脱ぐと、 高橋さんは私を抱っこして寝室へと向かった。 そして、 ベッドにそっと降ろして私を座らせると、 高橋さんがジャケットを脱いでネクタイを緩めて外し、 椅子にそれを掛けると、 隣りに座って私をまた抱きしめた。