新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

含んだような言い方に、 髙橋さんはチラッと横目で山本さんを見たが、 すぐにどこかに電話をかけ始めていた。
「じゃあ、 陽子ちゃん。 また後でね」
「えっ? あっ……は、 はい」
結局、 総会も終わったその日。 山本さんも含め、 中原さんも一緒に4人で飲みに行った。
山本さんの実家は、 よく聞くと私の実家のすぐ近くという事がわかって、 ローカルな話題で盛り上がっていた。
高橋さんが、 トイレに立った時の事だった。 山本さんが、 気になる事を言い出した。
「ねえ、 陽子ちゃん!」
「はい?」
「貴博と、 上手くいってるの?」
「ブホッ!」
飲みかけていたウーロン茶を、 吹き出しそうになってしまった。
「まっ。 そのリアクションだと、 変わりないみたいね。 でも……なぁんか、 いつもと違う気がするのは気のせいかしら?」
「な、 何が……ですか?」
山本さんは、 怪しげな視線をこちらに向けた。
「貴方達……ヤッたでしょ?」
「ゴホ……ゴホッ!」
唐突な山本さんの言葉に、 今度は中原さんがむせてしまった。
「あら。 大丈夫? イケメン中原」
中原さんには、 あれから山本さんの正体を教えてあったので、 もうだいぶ落ち着いていた。
山本さんは、 そんなことはお構いなしに話しを続けようとしたところで、 高橋さんが戻ってきた。
よ、 良かった……。
「そう言えば、 いつから貴博煙草やめたの?」
「ん? ああ……わりと最近な」
高橋さんはビールを一口飲むと、 枝豆をつまみながらそう応えていた。