新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

出張の時と一緒……また寝坊しちゃった。
「キャッ！」
びっくりしたのと恥ずかしいのとで、　思わず毛布を被って顔を隠した。
すると、　その毛布を高橋さんに剥ぎ取られ、　足元まで畳まれてしまった。
「いやだぁ！　高橋さん」
「いやじゃねぇだろ！　いい加減起きないと、　時差ボケなおらないぞ」
高橋さんが、　いきなり私の鼻を摘んだ。
「だじずるんでずがぁ」
「ハハハッ……。　おもしれぇ！　でも、　もう10時だから起きた方がいい」
高橋さんの言葉に、　まだ半分働いてない頭を回転させて、　耳を疑った。
「ええっ！　10時って……明良さんと仁さんは？」
「とっくに、　行っちゃったよ。　もう、　マウイに着いてるだろ」
嘘……。
「何で！　何で、　起こしてくれなかったんですか？」
ご挨拶も出来なかったし、　昨日の話では空港まで高橋さんと一緒に送っていって、　レンタカーの手続きのチェンジをしてくる予定だったはず。　それで、　空港の帰りに、　何処かで朝ご飯を食べてって言ってたのに……。
「起こしたぞ。　ホラッ！　その証拠に、　此処に置き手紙してあるだろ？」
「えっ？」
高橋さんが指差したサイドテーブルの上を見ると、　見覚えのある高橋さんの字で書かれたメモ書きが置いてあった。
【何度か起こしたが起きなかったので、　明良達を空港まで送ってくる。　６:00　TAKA】
「そんな……だって、　あんなに昨日早く寝たのに。　それに、　朝ご飯だって……その昨日話していた、　ローカルタウンで食べてみたかったのに……」
残念で仕方なかった。　別に高橋さんが悪いわけではないけれど、　むくれた顔で高橋さんを見た。