新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

「高橋さん？　帰って来たって……私は、　いつも高橋さんの傍にいますよ？」
本当にそうだから、　不思議に思いながら高橋さんを見上げた。
「２月から……本当に長かった」
高橋さん……。
本当に、　長かった。　思い返してみても、　心が痛くなって胸が締め付けられる思いがする。　きっと、　ミサさんの事でいろいろあって、　その事で別れてからもいろんな出来事が起こって……。　そして今、　またこうして一緒にいられる喜びを夢のように思いながらも、　その嬉しさを噛み締めている。
高橋さんも、　同じ気持ちなの？　同じ思いで……。
真上にいる高橋さんが、　私を抱きしめながら横になった。
それからは、　何も高橋さんは話さず、　私もそれに従ってそのまま目を閉じて、　耳に響いてくる高橋さんの心臓の鼓動を静かに聞いている。　そんな事にも、　凄く安心出来る自分がいる。　そして、　それはこの抱きしめてくれる、　高橋さんの胸や腕、　その他すべてが私に全権の信頼を提供してくれて、　その大きな心で、　愛情を確立させてくれている。　高橋さんは、　どんなに私が迷っていても、　必ず手を差し伸べてくれるから。　その差し伸べてくれた手を、　ずっと離したくないな……。　高橋さん……その手を離さないで。　お願い……。　そんな事を考えていたら、　いつの間にか眠りについていたようで、　いつから開いていたのかわからないが、　きっと高橋さんが開けたであろう。　ロールカーテンの向こうから射し込む、　朝陽の眩しさで目が覚めた。
不意に視線を感じて枕元を見ると、　高橋さんがベッドに両肘を突きながら、　両手を頬に当てて小首を傾げながらこちらを見ていた。