新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

「む、 無理です! 無理、 無理! 絶対、 無理ですから」
私からなんて、 想像しただけでも顔から火を吹きそうだった。 そして、 何としても私の下にいる高橋さんから離れようと上体を起こそうとしたが、 抱きしめられている両手に高橋さんが力を込めたので、 それは敵わなかった。
「何だよ! その思いっきり否定症候群は」
「そ、 そんな事言われても……無理ですって」
まだ何もしていないうちから、  すでに首だけでも高橋さんの顔から離れようと、 無意識のうちに少し後ろに反らせている。
「貴ちゃん。 何気に傷ついた」
高橋さん……。
そんな子供みたいな事を言いながら、 高橋さんは口を尖らせて不満顔をしている。
た、 貴ちゃん。 何気に傷ついたって、 そんな事言われても……。
「あっ……えっ……あ、 あの……そ、 そんなぁ……う、 うわっ!」
高橋さんが私を抱きしめたまま、 急に視界がグルッと反転したと思ったら、 高橋さんの顔が真上に迫っていた。
「フッ……。 意地悪貴ちゃんも、 そろそろ終わりにしてやるかな」
な、 何?
意地悪貴ちゃんって……。
「俺は、 強要するぐらいなら自分からする」
「高橋さん」