新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

今の高橋さんって……。
今の私って……。
高橋さんは、　私を重荷に感じていないのかな？
私は、　高橋さんを重荷に感じているの？
そんな事を考えていると、　ふと左頬に当たるオレンジ色の光りがとても熱く感じられて、　上半身だけ体を起こして窓の方を見ると、　夕陽が沈むところだった。
あっ……あれは……。
砂浜に、　高橋さんの後ろ姿を見つけた。
高橋さんも、　ジッと沈む夕陽を見ていた。
同じ夕陽を見ているのに、　これだけ高橋さんと私には今、　距離が出来てしまっている。　これって、　お互いの心の距離なのかな？
こんなに高橋さんが好きなのに……でも、　とても不安になってしまう。
えっ……？
砂浜で夕陽を見ていた高橋さんに、　恐らく日本人の女の子だろう。　2人が近づいてきて話し掛けたようだった。
嫌だな。
やっぱり、　知らない女の子に声を掛けられているところを見るのは、　気持ちのいいものじゃない。
『　モテる男の彼女になった宿命よ　』
智子さんの言葉が、　脳裏を掠めていった。
見るのは、　やめよう。
そう思って、　夕陽がまだ完全には沈んでいなかったけれど、　そのまま窓に背を向けて壁に映し出されるオレンジ色の光と共に、　背中に夕陽を感じながら暫く立っていた。
でも……やっぱり気になる。　勇気を出して、　思い切ってもう1度振り返ったが、　しかしそこにはもう、　高橋さんの姿も女の子姿もなかった。　お部屋に、　戻ってきたのかな？　何処に行っちゃったの？　高橋さん……。　もしかして、　明良さんのコテージに居るのかも？　きっと、　そうだ。
何とも利己中心的だと、　自分でも思う。　姿が見えなければ捜して……居ると安心して、　我が儘を言ってしまう。　高橋さんに、　謝らなきゃ。　やっぱり、　私が悪い。　きっと、　さっきの事だって……。
トントン。
エッ……。