新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

「明良!」
高橋さんと仁さんが、 同時に明良さんの頭とお尻を叩いていた。
「痛いって。 何すんだよ。 お前等、 何で俺ばっかりダブルで狙うんだよ」
「陽子ちゃん。 行こう」
仁さんがそう言うと、 高橋さんも一緒に喚いている明良さんを尻目に、 コテージの玄関の方へと歩き出してしまった。
「じゃあ、 夕飯の時にな」
「ああ」
高橋さんと仁さんはそう言って別れ、 高橋さんと私は自分達のコテージへと戻った。

シャワーを高橋さんが浴びている間、 ソファーに座っていたら、 また知らぬ間にウトウトしてしまっていたらしい。 背もたれに横向きになってもたれながら眠っていると、 何となく髪を触られているような気がして目が覚めた。 静かに目を開けると、 目の前に背もたれに肘を突きながら横に座っていた高橋さんの顔が度アップで迫っていた。
「うわぁ!」
驚いて、 ソファーの背もたれから飛び起きたが、 そのまま高橋さんにソファーに押し倒されてしまった。 そして、 両肩の横に高橋さんに両手を突かれてしまったので、 身動きがとれなかった。
「た、 高橋さん!」
すると、 乱れてしまっていた私の前髪を、 高橋さんが手で掻き分けてくれた。
「さっき、 智子に何を言われてた?」
「えっ?」
真上に迫っていた高橋さんの目を見ると、 その黒い瞳が真剣な眼差しで私を見ている。
「と、 特に、 別に何も……た、 ただの世間話をしていただけですよ」
そうは言ったものの、 まともに視線を合わせられず、 首を動かしながら視線を泳がせていた。
「……」
エッ……?
何も言ってくれない高橋さんに不安を感じて、 静かにゆっくりと高橋さんの方を見た。
うっ。
目が合っちゃった。