新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

「何だか、 いつもおどおどしてるし……自信なさそうな顔してるけど。 もっと、 自分に自信を持って! 貴博の彼女なんだから、 堂々としていなさいよね」
「智子さん……」
「貴女を見ていると、 イライラするのよ。 あれだけ貴博に愛されて、 大事にされているんだから。 知ってる? 海で遊んでいても、 必ず5分に1回は、 貴博は砂浜に居る貴女を見ているわよ。 今もね」
エッ……。
思わず、 海に入っている高橋さんの姿を捜した。
「同じ日本人の女として、 もっと自分をアピールしなさい! そして、 自信を持ってもっと胸張ってよね。 私が好きだった人……あの年上の人以来、 貴博を振り向かせられたのは、 貴女が初めてなんだから」
そう言うと、 智子さんは勢いよく立ち上がった。
「じ~ん! そろそろ、 帰るぅ」
大きな声で、 智子さんが仁さんに向かって叫んだ。
自分の主張を、 ハッキリと言える人……。 ある意味、 少しまゆみに似ている人なのかもしれない。
すると、 仁さんが海から上がってきた。
「お邪魔したわね。 でも、 もうすぐ消えるから2人きりよ」
「えっ?」
智子さんの言っている意味が、 わからなかった。
「帰るのか?」
「うん。 明日、 早いでしょ? だから、 もう帰る。 旦那も、 きっともうすぐ帰ってくると思うしね」
やっぱり智子さんは、 結婚しているんだ。
「それじゃ、 ジョージによろしくな。 明日、 8時に空港で。 玄関の荷物……あれを持っていけばいいんだろ?」
ジョージ?
「うん。 お願い。 ジョージの機材とかで、 車のトランクいっぱいになっちゃうと思うから」
「わかった」
2人が何の話をしているのか、 さっぱりわからなかった。
「それじゃ、 明日」
「バ~イ! 陽子ちゃん」