新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

「陽子ちゃぁん! 大丈夫?」
「あっ……は、 はい」
「ちょっと、 いい?」
起き上がっていた私の右隣に明良さんが座ると、 腕時計を見ながら右手首を持って脈を計り始めた。
「ちょっと、 失礼」
そう言って、 私のTシャツの襟を少しだけ捲ると、 持って来た聴診器をあてた。
あれ?
視界に、 高橋さんが入らない。 居ないの?
何処に、 行ったんだろう?
今は、 明良さんの診察を受けているから、 ジッとしていなければならない。 不安になってしまい、 体は動かせないから視線だけ動かしてはみるものの、 高橋さんの姿は見えなかった。
明良さんは、 それから下瞼の裏を診たり、 首のリンパ節を触ったりして最後に手の爪を見た。
「陽子ちゃん」
「は、 はい」
「真後ろの窓際で、 外を見ているから大丈夫」
「えっ?」
驚いて、 思わず明良さんの顔を見てしまった。
どうして、 わかったんだろう?
すると、 明良さんは微笑みながら耳元で囁いた。
「いいのしてるね。 さっきは、 からかってゴメン!」
明良さんがコッソリ指差した先には、 私がしているペンダントがあった。
明良さんの顔を見ながら、 思いっきり首を横に振った途端、 いきなり地鳴りのようなもの凄い音で、 お腹が鳴ってしまった。
う、 嘘でしょう……。 は、 恥ずかしい。
絶対、 明良さんや高橋さんにも聞こえたはず。
「はぁあ?」
うっ。
その音に明良さんが驚いて、 思わず声を上げたと同時に、 咄嗟に俯いた私の顔を覗き込んだ。
「今の、 明良じゃねぇのかよ?」
えっ……。