新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

高橋さんは、 まったく明良さんに言われても動じるどころか、 聞き返すって……ど、 どうなの?
明良さんが、 真後ろに近づいて来たみたいで、 視界にやや黒い人影が見えた。
「そうしたらさ! 男が、 オオカミに変身しちゃってね。 女の子に襲い掛かっちゃって……もう、 見ていられないったらありゃしない。 こっちが、 恥ずかしくなっちゃったよ」
もう、 恥ずかしくて居たたまれなくなって、 ビーチベットから立ち上がり、 そのままコテージまで全力で走った。
嫌だ、 明良さん。 そんな事、 言わないで。 この先、 どうしたら良いの? どう、 接したら良いの?
滞在中、 事あるごとに言われそうで、 恥ずかしくて一緒になんていられない。
炎天下の中を全力で走ったものだから、 暑い外から冷え切ったように感じられるほどの部屋の中に入った途端、 その温度差にクラクラして、 目眩のような、 立ちくらみを起こしてしまった。
真っ直ぐ歩けず、 よろけて壁にぶち当たりながら、 やっとの思いでソファーに倒れ込んだ。
まだクラクラするし、 目を瞑ると何だかグルグル回っている気がする。
冷たい何かが仰向けにソファーに倒れ込んだ拍子に顎に当たって、 金属のような音と共にヒンヤリとした感触がした。
そっと、 右手でそれに触れる。 さっき高橋さんがくれた、 ペンダントだ。
目を瞑ったまま、 ペンダントヘッドをギュッと握りしめ、 早くこの目眩のような感じが去ってくれるのを待った。
急に、 走ったから?
そんな柔な体じゃなかったはずなのに……情けないな。
暫く横になっていると、 裏口のドアの開く音がした。
高橋さん?