久しぶりの会社。
見慣れた景色の事務所に入り、 一歩一歩新鮮な気持ちで噛みしめながら会計のところまで歩いていく。 この時ほど、 健康って有難い事なんだと思った事はなかったかもしれない。 普段、 忘れがちだけれど健康あっての仕事、 生活、 そして人生……。 改めて実感した、 瞬間だった。
手前に座っている、 中原さんの姿が見えた。
「中原さん……」
思わず呟いた私の声に中原さんは気づいたようで、 近づいて行く私の方を振り向いた。
「おぉぉ! 矢島さん。 久しぶり! 大丈夫?」
そんないつもと変わらない中原さんの優しさに、 懐かしさも相俟って鼻の奥がツーンとなった。
「中原さん。 本当に色々ご迷惑をお掛けして、 申し訳ありませんでした」
そう言って、 泣きそうになりながら中原さんに向かってお辞儀をすると、 そんな私の後頭部をポン! と中原さんが軽く叩いた。
そんな中原さんの思いも寄らない行動にビックリして、 痛くもない頭を押さえながら顔をあげると、 中原さんは笑いながら囁いた。
「俺より、 高橋さんの方が大変だったと思うよ」
「えっ?」
「だってさ……ちょうど異動の時期と重なっていた時だったから、 上から突かれるわ。 部内からもいろいろ言われるわ。 でも、 何も聞き入れず、 受け入れず。 その分は、 自分がフォローしますからって。 高橋さんは矢面に立たされても、 それでも全く意思は曲げずに押し通したんだ」
「そんな……」
「同じ部長でも年功序列があろうが、 なかろうが。 絶対に矢島さんの代わりは採らないし、 必要ないですからと言い切っていたよ。 社長にも、 言っていたらしいから。 高橋さんらしいよ。 根回しは、 怠らない。 そして、 自分より上位だろうが何だろうが、 決して怯まなかった」
知らなかった。
高橋さんは、 中原さんが必死になってフォローしてくれているって……。 勿論、 きっとそれも本当の事だったんだと思う。 でも、 私の知らないところでそんなことが起きていたなんて……高橋さん……貴方という人は……。
そう言って、 中原さんは奥に座っている高橋さんの方を見たので、 中原さんのその視線の先を追うと、 高橋さんに行き着いた。
「早く行って。 高橋さんに、 事務所に居る矢島さんの元気な姿を見せてあげて」
背中を押してくれた中原さんに言われるまま、 高橋さんの席に向かった。
「お、 おはようございます。 色々ご迷惑をお掛けしまして、 申し訳ありませんでした」
緊張してしまい、 心なしか声が震えてしまった。
見慣れた景色の事務所に入り、 一歩一歩新鮮な気持ちで噛みしめながら会計のところまで歩いていく。 この時ほど、 健康って有難い事なんだと思った事はなかったかもしれない。 普段、 忘れがちだけれど健康あっての仕事、 生活、 そして人生……。 改めて実感した、 瞬間だった。
手前に座っている、 中原さんの姿が見えた。
「中原さん……」
思わず呟いた私の声に中原さんは気づいたようで、 近づいて行く私の方を振り向いた。
「おぉぉ! 矢島さん。 久しぶり! 大丈夫?」
そんないつもと変わらない中原さんの優しさに、 懐かしさも相俟って鼻の奥がツーンとなった。
「中原さん。 本当に色々ご迷惑をお掛けして、 申し訳ありませんでした」
そう言って、 泣きそうになりながら中原さんに向かってお辞儀をすると、 そんな私の後頭部をポン! と中原さんが軽く叩いた。
そんな中原さんの思いも寄らない行動にビックリして、 痛くもない頭を押さえながら顔をあげると、 中原さんは笑いながら囁いた。
「俺より、 高橋さんの方が大変だったと思うよ」
「えっ?」
「だってさ……ちょうど異動の時期と重なっていた時だったから、 上から突かれるわ。 部内からもいろいろ言われるわ。 でも、 何も聞き入れず、 受け入れず。 その分は、 自分がフォローしますからって。 高橋さんは矢面に立たされても、 それでも全く意思は曲げずに押し通したんだ」
「そんな……」
「同じ部長でも年功序列があろうが、 なかろうが。 絶対に矢島さんの代わりは採らないし、 必要ないですからと言い切っていたよ。 社長にも、 言っていたらしいから。 高橋さんらしいよ。 根回しは、 怠らない。 そして、 自分より上位だろうが何だろうが、 決して怯まなかった」
知らなかった。
高橋さんは、 中原さんが必死になってフォローしてくれているって……。 勿論、 きっとそれも本当の事だったんだと思う。 でも、 私の知らないところでそんなことが起きていたなんて……高橋さん……貴方という人は……。
そう言って、 中原さんは奥に座っている高橋さんの方を見たので、 中原さんのその視線の先を追うと、 高橋さんに行き着いた。
「早く行って。 高橋さんに、 事務所に居る矢島さんの元気な姿を見せてあげて」
背中を押してくれた中原さんに言われるまま、 高橋さんの席に向かった。
「お、 おはようございます。 色々ご迷惑をお掛けしまして、 申し訳ありませんでした」
緊張してしまい、 心なしか声が震えてしまった。


