新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

交わされるキスの音だけが、 聞こえている寝室。
「まだ、 あと2ヶ月ある。 その間に、 もっとお前は元気にならないと」
「高橋さ……ンンッ……」
苦しい……息が出来ない。
「ハアハア……」
やっと少しだけ解放してもらえたが、 両肩はガッチリ高橋さんにガードされていて身動きが取れない。
「それまで楽しみは、 とっとくかな」
高橋さん……。
「でも……」
見上げると、 高橋さんが口元を少しだけ吊り上げ、 不敵な微笑みを浮かべていた。
な、 何?
「さっき、 せっかくお前が誘ってくれたからなぁ」
「さ、 誘ってなんて……」
「フッ……キスだけでイカせてやってもいいぞ?」
「キャッ!」
そう言うと、 高橋さんは私の両頬を両手で包み込み、 今までとは比べものにならないほどの深いキスを落とし始めた。
「ハンッ……ンンンッ……」
駄目……本当に、 何だか朦朧として来ちゃっている。 このままもしベッドの上でなかったら、 腰砕けになっていただろう。 高橋さんは、 本当にキスしかして来ない。 まして首から上にしか、 高橋さんの唇は私に触れていない。 それなのに、 もういつの間にか夢見心地の気分で、 自分から高橋さんの胸に顔を埋めてしまい、 呼吸を整えていた。
「フッ……」
結局、 高橋さんはキス以上の事は、 求めて来なかった。
そして、 何よりも悔しいのは、 私と違って全くと言っていいほど、 いつもと変わらない余裕の表情だったという事。 私は1人、 高橋さんにされるがままに快楽の縁へと落ちていた。
「悔しい……」
つい、 本音が口を突いて出た。
「なぁ~にが?」
「だって……高橋さんは、 普通なんだもん」
むくれながら、 胸に埋めていた顔をあげて高橋さんを見た。
「ハハッ……俺に勝とうなんざ、 1000万年早いって」
そして、 高橋さんはまた私を腕の中にスッポリとおさめ、 そのまま私もいつしか眠りについていた。