新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

高橋さんは、 私に大人になって自立しろと?
「お前の感受性に富んだ素直なところが、 俺は好きだ。 だが、 お前はどうする? この先俺のいない時、 困難に直面した時、 壁にぶち当たった時、 どうするんだ? そんなお前を完璧にカバー出来るほど、 俺はまだそんな器じゃない。 女性が男に頼るのは、 生理的にも当たり前の事だと俺は思う。 だけど、 どうだろう? それで良いのか? お前1人の感情だけで、 左右されてしまって良いと思うか? その時、 子供が居たとしたら、 どうする? 逃げ出す事も、 出来ないだろう? 他人様に頼らなければ、 崩れ落ちてしまうような脆さも、 時として良いのかもしれないが、 人生は感情だけでは成り立たない」
高橋さんの言ってくれている、 1つ1つの言葉に声も出ない。 あまりにも今まで歩んできた人生を的確に。 且つ、 私のリスキーな部分の性格……デメリットを全て曝け出されている。
「全てを1人で解決しろとは言わないし、 1人で背負い込めとも言わない。 他人よりも時間が掛かったとしても、 その時間は尊い。 だからこそ、 その時、 その時点での自分の出来る範囲で最善を尽くすという事が、 大事なんだ。 勿論、 誰かに相談するのも良いだろう。 しかし、 最終的に結論を出すのは、 自分だという事を忘れないで欲しい」
「高橋さん……」
「勘違いしないでくれ。 今のお前の性格が悪いとか、 そういう事を言っている訳じゃないんだからな。 もう大人なんだからと諭す大人も、 子供のくせに……と蔑む大人も、 皆同じ道を通ってきているんだ。 分かるか?」
高橋さんの声は、 とても優しかった。
「人間、 みんな自分が1番若いと思っている」
エッ……。
「周りが同世代だと、 尚のことそう思って疑わない。 けれど、 着実に年齢は重ねていく。 こればかりは、 誰にも止められない。 ふと気づいた時、 親が自分を生んでくれた時の年齢になっていたりもする。 そう……自分が1番若いと思っているのは、 常に自分と向き合っているから。 でも、 周りから見たらその年齢は十分大人でしょ? と、 思われている年齢だったりもする。 これは、 一生付いて回ることだと俺は思っている。 自分の年齢を書面で確認したり、 第三者から年齢的に……なんてことを言われて、 我に返る。 それでも、 自分が1番若いということへの確信は変わらない。 どんなに年齢を重ねてもな。 例外なく、 お前も俺も今この時も、 そう思っていることは、 ごく自然なことだから」 
私に理解できるよう、 分かりやすく説明して諭してくれている。 その優しさが痛いほど分かるから、 何度も肯定の頷きをしながら泣いていた。