新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

うっ。
俯いたままだったけれど、 高橋さんの声は心に響く。
「何かに迷っているのなら、 その気持ちを表に出せ。 考えているだけで終わりにしても良いのなら、 顔をあげるだけでいい」
高橋さん……。
やっぱり、 高橋さんが好きだ。 自分の心の在り処を、 改めて実感する。 邪念や疑心を誤魔化す事は、 この人には通用しないし出来ない。 勇気を出して顔をあげた途端、 高橋さんが私のオデコをツンツンと突いた。
「それで?」
優しく微笑んでいる高橋さんの顔を見ると、 心の整理が出来なくなって何から話していいのか分からない。 でも、 行き着くところは全て高橋さんに繋がっていて……苦し紛れに小手先だけの言葉を並べても、 意味がないような気がする。 到達点……つまり、 全てはそこに行き着くわけだから……私は……。
「今……高橋さんと、 こうやって過ごしている日々を失う事も、 会社に高橋さんの姿がない事も……私には現実的に考えられないし、 想像出来ないんです。 私は、 子供だから……高橋さんのように、 割り切って考えられなくて。 自分が、 この先どうなってしまうのかさえ、 全く分からないんです。 でも、 高橋さんには夢を叶えて欲しいんです。 だから……だから……アメリカに行って欲しいから、 私のために会社を辞めるとか、 言って欲しくないです。 だけど、 でも……割り切れない部分があって……。 今の、 この生活がなくなるのなんて、 やっぱり私には……」
そこまで言うのがやっとで、 両手で顔を覆った。
そんな言葉にならない私の涙を、 高橋さんはそっと指先で拭ってくれて、 指の温もりを感じさせてくれた。
エッ……。
ふと胸元に体温を感じ視線を移すと、 高橋さんがペンダントに触れていた。 そして、ペンダントを静かに私の胸元に戻すと、 私を見た。
「先のことなんて、 誰も分からない。 未来の話をしたところで、 何も解決はしない」
それは、 自分でも分かっているつもりなんだけど……。
「今から話す事は、 今回、 俺が海外赴任を決めた理由。 それと同時に、 お前に託す希望だ」
「希望……」
このペンダントが成せる、 石の意味。 それは、 希望。