新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

妊娠しているかどうかの結果が出て、 初めて気づいた。 自分の心の狭さと、 気持ちの余裕のなさ、 愚かさに。
何で、 そんな風に思ってしまったんだろう? 宿った命に、 罪はない。 寧ろ、 喜ぶべきおめでたい事なのに……。 しかし、 現実には安堵していた。
母性愛も、 何もない。 ただ、 ただ、 自分のエゴだけの無機質なほどの感情。 自分中心で、 浅はかで……高橋さんの気持ちも、 確かめもせず……。
「う~ん……十二指腸かな? 今まで胃腸に潰瘍とか出来て、 治療した経験は?」
「それは、 ないです」
それから先生は、 胃から腸のあたりを何度となく押していたが、 やはり最初押された場所が1番痛くて気持ち悪かった。
「はい。 もう、 楽にしていいですよ。 風邪とかウィルス性のものから来ている、 一過性のものならいいんですが。 念のため、 1度検査をした方が良いと思います。 それじゃ、 今日は胃全体のCT と採血をしていって下さい。 それから、 胃カメラの検査をしてみましょう。 受付で、 その予約もして行って下さい」
「はい」
起き上がりながら、 服装を直す。
「あとは、 また検査結果を診てからにしましょう。 整腸剤と胃薬を今日は処方しておきますので、 それを飲んでいただいて、 検査結果が分かってから、 また治療や投薬の事は考えましょう。 では、 次回は……CTの結果は分かっているので、 また来週土曜日の10時30分に予約入れておきますから、 もう1度いらして下さい」
「はい。 ありがとうございました」
「このファイルを、 受付に出してお待ちください。 お大事に」
「ありがとうございました」
高橋さんが、 代わりに挨拶をしてくれたので、 お辞儀をして先生から会計カードを受け取って診察室から出た。
出た途端、 力が抜けた気がした。
「受付に、 ファイル出さないと」
エッ……。