新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

この検査の結果で、 すべてが変わってしまうのかな? もし……すべてが変わらないとしても、 大袈裟なようだが、 私の人生を左右するほどの重大な事のように思えて仕方がなかった。
でも……。
高橋さんは、 毎回最初からちゃんと避妊していた。 それでも、 こんな事あるのかな?
だけど……前に、 まゆみが教えてくれた事を思い出す。 絶対、 100%とは限らないし、 万が一って事も考えられると……。
その万が一だったらと思うと、 複雑な心境だった。
大好きな高橋さんの子供……でも今は……何も今、 このタイミングで……。
もしも……もしも、 私のお腹の中に生命が宿っているとしたら……たとえ、 私自身が口を閉ざす事が出来たとしても、 どんな事があっても目を背ける事も、 耳を塞ぐ事も出来ない。 蓋をしてなかった事にするなんて、 絶対に無理。
そんな簡単な言葉だけでは、 表す事の出来ない事実。
ふと、 ミサさんの事を思い出した。
高橋さんの将来の事を考えて、 敢えて自分から身を引いて、 高橋さんの子供を産んだミサさん。 今だったら、 そんなミサさんの気持ちがわかるような気がした。 ニュアンスは違っても、 きっと今の私の気持ちと同じだっただろうと想像がつく。
尿検査の容器を提出して、 いろんな事を考えていたら自然と歩調も遅くなっている。 足取りも重いまま、 また待合室の高橋さんが座っているところまで戻ろうと向かっていると、 白衣を着た人が高橋さんの前に背中を向けて立っていた。
明良さん……。
何だか、 気まずいな。
そう思いながら近づいていくと、 高橋さんが私に気づいて明良さんの立っている横から顔を覗かせ、 その動作に明良さんも気づいて振り返った。
「あっ! 陽子ちゃ~ん。 久しぶり」
「こ、 こんにちは」
「何? 具合悪いんだって?」
明良さんにそう聞かれて、 咄嗟に座っている高橋さんの顔を見たが、 高橋さんはいつものポーカーフェイスで、 明良さんにどこまで話したのかはわからない。
「あっ……はい。 そうなんです。 ちょっと、 吐き気がして……」
医者の明良さんに隠し事をしたところで始まらないので、 正直に症状を話した。