新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

せっかく、 アメリカに行く話しをしてくれたのに……その翌日に、 こんな事になってしまうなんて。
でも、 やっぱり気になる。
今、 高橋さんがどんな顔をしているのか?
恐る恐る、 高橋さんの方を見た。
すると、 高橋さんと目があった。
でも……その表情からは、 高橋さんの気持ちを窺い知る事は出来なかった。
それどころか、 高橋さんは右手で私の頭を上から掴むと、 無理矢理まだ説明してくれている看護師さんの方へと、 私を向かせた。
ドキドキして、 心臓の鼓動が速すぎて苦しい。
「それじゃ、 まずお持ちの診察券を、 そこの受診受付の機械に通して頂いて、 とりあえず受診する科は消化器内科なので、 消化器内科のところを押してください。 そうすると、 受付番号票が発行されますから、 その受付番号票をお持ちになって、 この1階奥の消化器内科の受付に診察券と、 この問診票とお出し下さい。 そこで診てもらって、 もし産婦人科の方へと案内されたら、 そのまま行かれますから。 消化器内科で、 またご案内しますのでお願いします」
「はい。 ありがとうございます」
きっと、 高橋さんの事だから……さっきから、 いろんな事を考えてしまっているのかな? やっぱり、 無理を押してでも1人で来るべきだった。
受診受付の機械に診察券を通し、 受付番号を取ってから消化器内科の受付に向かう。
その間、 いろんな事が頭の中を巡り、 全身が小刻みに震えているような錯覚に陥って、 必死で気持ちを落ち着けようとした。 しかし、 歩いている時も高橋さんは、 ひと言も話し掛けてこない。 そんな高橋さんの顔を、 怖くて見ることも出来なかったけれど……。
消化器内科の受付に診察券と問診票を渡してから、 待合室の長椅子に高橋さんと並んで座った。 もう、 すでに息が詰まりそう。 隣りに座っている高橋さんの顔を見る事も、 話し掛ける事すら出来ないでいる。
暫くすると、 看護師さんに呼ばれて先に尿検査をするからと、 徐に容器を渡され検査室へと向かった。