新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

「フッ……。 朝食出来てるから、 早くシャワー浴びておいで」
「はぁぁい」
布団の中から返事をしたが、 ふと気が緩んで涙が出そうになってしまった。 こんな幸せな朝も、 あと何日もないんだ。 昨夜、 高橋さんに言われた事を思い出しながら、 シャワーを浴びていた。
本当は……本心は……高橋さんは、 私に待っていて欲しいのかな? けれど、 それは自分のエゴだから言わない。 でも、 本音はそうであって欲しい。
そんな事を思いながらも、 気を取り直して高橋さんに借りたワンピースのようになってしまっているシャツを着て、 リビングに向かった。
良い匂いがする。
「ご飯炊けてるから、 よそってくれる?」
キッチンでコーヒーを注いでいた高橋さんが、 そう言った。
「はい」
いつもの朝。 他愛ない会話。
高橋さん……。
「ごめんなさい。 また朝食の支度、 高橋さんに全部やって頂いちゃって」
「ハッ? 今に始まった事じゃないですからねぇ」
何気に傷つきながらも、 事実だけに言い返せない。
炊飯器の蓋を開けて、 炊きたてのご飯をよそおうとした。
ふわ~っと、 炊きたてのご飯の良い匂いが漂う。 炊きたてで、 美味しそう。
「うっ……」
なんだろう? 
急に気持ち悪い……嘘……吐きそう。
そのまま口を押さえて、 急いで洗面所に向かった。