パティシエ総長と歪な少女



「あっ………!ご、ごめんなさいっ…!」


後悔と申し訳なさが込み上げてきて、私は慌てて正座をした。
手を前につくと、額が床につくまで深い土下座をする。

殴ってしまった…。
しかも、おそらくパンチは鳩尾にストレートで入ってしまった。
男を殴った右手がプルプルと震えていた。

汗がぽたりと垂れる。


「すみません…!申し訳ありません…!!」


深々と土下座をして、叱咤の言葉を怯えながら待った。



「っ……!お前…大丈夫かよ。」



男の言葉に、「へ?」と間抜けな声が出る。

心配…されてしまった?



「パニック…起こしてただろ……、落ち着くまで…そこにいろ…」



顔を上げると、すごく苦しそうな顔をした男が私の顔を覗き込んでいた。

心配されなきゃいけないのはどちらなのか、と突っ込みたくなった。


「ほ、本当にすみません……!」


言葉に甘えることしかできない自分が情けなくて、縮こまってしまう。

それを見て、男は苦笑した。


「いいっていいって。色々事情があるんだろ。それに、俺のこと殴った女の子なんて初めてだし…な。」

「それは本当にすみませんっ!!」


自分でも殴るとは思っていなかった。
想像以上にパニックになってしまったようだ。


「いい拳だったぞ。」


私の隣に座った男は私と目を合わせて微笑んだ。


…!?