「ゆっこー!!後夜祭始まったのに凛がいない!」
蓮がわかりやすく困った顔をして走ってきた。
相撲部の後片付けを終わらせて着替えた私は、突進してくる蓮を抱き止めた。
「え〜、どうしたのかな。」
凛か……。
凛は、綺麗な容姿をした少女だ。
入学した時から、彼女のことは知っていた。
彼女の容姿から、入学当初はクラスのほぼ全員が凛を気にしていた。
しかし、彼女が常に一人でいようとするため、彼女に意識を向ける人は日に日に減っていった。
誰とも話さなかったが、いつも背筋は伸びていて、名前のように凛とした強い雰囲気を感じた。
ただ、それとともに儚く、悲しく、脆い雰囲気も漂っていた。
放っておいたら消えてしまいそうな、思わず意識せずにはいられないような不思議な子だ。
「探しに行かなくちゃね、凛のことだし、どこかの空き教室にいるんじゃないかなぁ。」
そう言って蓮を自分から引き剥がし、先導して階段を登る。
階段から見える空はほとんど明るさを消し、くすんだ赤色から深い藍色のグラデーションを描いていた。
「蓮、空き教室ってどこにあるかな?」
「あ、えっと……こっちとか?」
今日1番はしゃいで校舎を駆け回っていたであろう蓮が今度は先導する。
彼女の記憶力には目を見張るものがある。
空き教室がどこにあるかということはどうやら把握済みのようだ。
外の明るさが消え、少し不気味な校舎の廊下を歩く。
生徒たちはほとんどが外の後夜祭に行ってしまったようで、人の気配が無い。
