パティシエ総長と歪な少女



「ご、ごめん……私、何、して……」


御神楽への恐怖からか、周りを見失っていた。


「な、な、な…なんてこと、するのよっ……!凛に…つ、つぎ何かしたらっ……私も黙っていないわよっ…!」


声どころか全身の震えている蓮ちゃんが御神楽に怒っていた。


「えぇ、俺のせいかよ!?」


オロオロする御神楽。

前髪をぐしゃっとかきあげながら、私を見下ろした。


「あっ…」


ゆっこちゃんがぎゅっと私を抱きしめた。


「よぉ。腹パンちゃん。その……昨日は…悪かったよ…。」


プイッと横を向きながら私に紙袋を突き出してくる。


「え?」


う、受け取れってことかな……。


「お詫びの品…?っつーか俺の店のケーキだけどよ……。やるよ、腹パンちゃん。誰かさんのせいでちょっと傷んだかもしれんけどな!」


あっ…!
もしかしてさっき、怒鳴ってまで必死で私を止めようとしたのは、ケーキが崩れないようにするため…?


「ご……ごめんなさい…」

「まったくだ。まだ痛むぞ」


お腹をさすりながら御神楽は顔を顰めた。

座り込んだ私の目線と合うように彼はしゃがみ込み、顔を見つめてきた。

褐色の彼の目が私の目を捉えている。


「顔は覚えたからな!」


そう言って彼は立ち上がり、歩き去っていった。