パティシエ総長と歪な少女




「女の子の一人や二人ナンパしたっていいだろ、ていうか御神楽はこの子に関係あんのかよ。」


「ぐっ……」



言い返す男子生徒に情けなくも言葉に詰まる竜司くん。

いや、ほぼ私のせいなんだけどね…。

私が竜司くんと関係があるってこと、言わないようにしてくれているんだ。

ありがたさが込み上げてくるが、その直後の竜司くんの行動に私は仰天することになる。


突然振りかぶった竜司くんが、持っていた起こし金をぶん投げてきたのだ。



「あぇ…?」



理解が追いつかず、歯の抜けたような声を出す男子生徒。

焼きそば投げなかったのは偉いけど!!!違う!!!起こし金はもっとまずい!!!

こんなフラグ回収誰も望んでいないから!

頭の中が焦りとツッコミで渋滞だ。



「危ない!!」



反射的に手を伸ばし、男子生徒の顔面に直撃する前に起こし金を片手でキャッチする。


どすんと尻餅をついた男子生徒が化け物を見たような顔で放心していた。


運良く私は起こし金の持ち手部分をキャッチできたらしく、お互いに怪我は避けられたようだ。

は……反射神経と動体視力に感謝………。

額を流れる冷や汗を拭い、起こし金を竜司くんに返す。



「危ないです、気をつけてください。」



精一杯竜司くんを睨みつけ、声を絞り出す。



「いや、俺もまさかこうなるとは……頭に血が昇ってた、すまない。」



本気で焦った顔をして謝る竜司くん。

なんで、私がナンパされただけで起こし金をぶん投げるかなぁ!?

私は困惑しながらも焼きそばを受け取った。




「ほんとごめんね凛ちゃん……お代はいらないから。」

「えっ」

「お詫びだよ、俺からの奢り。」



小さく囁かれる。

それは悪い、とは思いながらもお詫びされて当然な気もする…けど結局元を辿れば私の責任なんだよなぁ…



「あ………えっと……バイト、もっと頑張るね。」



結局思考を巡らせた結果、この答えが1番無難なのではないかという結論に辿り着いた。

にっと笑った竜司くんの笑みはさっきの嘘臭さがなく、いつもの微笑みで安心した。


やがて時が動き出したかのように周りの女の子たちが騒ぎ始め、屋台は営業を再開した。


私のことなんか記憶にも無さそうに。