彼の勢いに圧倒されながらも「じゃ、じゃあ焼きそばひとつ…」となんとか声を絞り出す。
「焼きそばひとつ、注文いただきました〜!」
聞いたこともないような竜司くんの営業爽やかボイスに驚いて目を見開いてしまった。
何ですか、その語尾が上がる言い方。
思わずまじまじと焼きそばをパックに詰める竜司くんを観察してしまう。
黒いクラスTシャツとエプロンに身を包み、髪を後ろで結っている。
汗の滲む首筋の美しさに見惚れそうになるが、それよりも見たことのないにっこにこ営業スマイルが怖すぎる。
ケーキを売る時も仏頂面なのに、何、これ、怖…
「ねね、君、1年生?かわいいね、連絡先交換しない?それか今度会おう!いや、後で一緒にご飯食べない?あ、君、どこのクラス?」
竜司くんにドン引きしていたところ、さっき半ば強引に私を屋台に連れてきた男の人がこれまたにっこにこで話しかけてきた。
いやいやいやいや、情報過多!情報過多!
え、何、私今どういう状況?
「おい、佐藤!!ナンパすんな殴るぞ。」
周りのざわめきと、焼きそばの焼ける音と、ダンス部の音楽と、それを切り裂く竜司くんの声と。
わけがわからなくなり、必死に竜司くんに目で訴える。
彼はパックに詰めた焼きそばを片手に、鬼の形相で佐藤と呼ばれた男子生徒を睨みつけていた。
「お、怖〜〜〜流石総長〜、はい、スマイルスマイル〜〜」
「何がスマイルだコラ、その子から離れろ。」
手に持つ焼きそばを投げつけんばかりに振りかぶっている。
いや……もしかしてこれ本当に投げつけるんじゃ……?
いや、フラグだフラグ。
こんなフラグ回収されちゃ困る!
