パティシエ総長と歪な少女



「ん……まぁそういうこともあるだろ。」

「え……、…は?」


上手く突っ込めず、喉で言葉が引っかかってしまった。


「俺もびっくり。転校初日から爆睡かます予定なんて無かったんだけどなあ。」

「うん。それは私もだから。」


全然びっくりしている様子のない竜司くんが舐めたことをほざくので最後まで聞かずに言葉を被せた。


「あっ……!」

「痛ぁっ!おい、どうした。」


私は突然立ち上がってしまい、私にもたれていた竜司くんはバランスを崩し、壁に頭を強打。

ちょっと申し訳なかったけど、それよりも大変なことに気づいてしまっていた私は謝るということが頭から抜けていた。


「開店時間…!」


その一言だけで伝わったようだ。

竜司くんの顔が青くなる。


「やっべぇ……そういえば今日田中さんがホールケーキ注文していたような……」

「マジ!?こんなことしている場合じゃないって!」


諦めたのか、乾いた笑い声を上げる竜司くんを引っ張り起こす。

オロオロする蓮に一言。


「ごめん、バイト!」


竜司くんを引っ張り、風のように階段を駆け降りる。


「き、気をつけてね!」


背後から聞こえる蓮の声に片手をあげて答え、階段の残りの5段を飛び降りた。


「凛ちゃん…!速い速い、速いって…!」


私が飛ばしても転ばずに付いてくる竜司くん。

よく合わせられるなぁと思いつつ、昇降口を抜けて、ダッシュ。

太陽はすっかり傾いている。

耳元に風を感じながらただただ走る。

右隣に竜司くんの息遣いを感じる。

さすが男子なだけあって速い。

私よりもずっと余裕がありそうだ。


「あ、凛ちゃん、思い出したわ。」

「何を?」

「俺、田中さんのホールケーキもう作り終わってるわ。ラッピングも完璧。」

「それは良かった。でも遅刻しているのは変わらないよ。」

「確かに。」


お互いに笑い合う。

まだまだ残暑の厳しい夏の日だ。


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