教授の恋愛

「ん?お前は講義ないのか?」

「はい。もうちょっとしたら友達と待ち合わせしてるんですけど…それまでいてもいいですか?」

「ま…まぁ…いいけど…」


たった一人、研究室に残った学生…。

木下だ。


俺だけか?

気まずいと思ってしまうのは…。


二人きりになって長い間沈黙が流れた。

俺が自分の気持ちに気付いてしまった以上、木下の気持ちを聞いてしまった以上…俺から何を話したらいいのかわからない。



「先生って結婚してないんですね?」


まるで沈黙を掻き消すように、木下が俺の指を覗き込みながら聞いてきた。