「……そういえば先輩の誕生日っていつなんですか?あの時、聞いてなかったですよね。」


「えっと……」


翠月先輩が口ごもる。

言えない理由でもあるのだろうか。

それとも、もう過ぎてしまったのか。


「6月28日。私の誕生日は、6月28日だよ。」


……6月28日。

あの日交わした“契約”の満了後だった。


「“契約”、終わった後なんですね。」


「うん。」


「……でも。」


「でも、もし良ければ、“彼氏”としてじゃなくても“後輩”としてなら、先輩の誕生日……祝えます。」


我ながら、恥ずかしいことを言ってしまったものだ。


「……いいの?」


「私の誕生日、祝ってくれるの?」


「はい。」



思えば、この時に僕はもう、翠月先輩のことが“好き”だったのだ。