“ちーくん”

璃玖先輩が僕を呼ぶ時は、いつもこうだ。

一緒に住んでいる家族にも、年に一度しか会わない親族にも、そんな風に呼ばれたことはなかったのに。


──なのに、今ではその呼ばれ方が一番しっくりくる。

これは、平凡な僕がまだ高校生だった時の恋の話である。